研究概要 |
本研究では、個体間の音声伝達のタイミング操作の効果、および同居個体の発声特性が小型霊長類であるマーモセットの発声タイミングに与える影響について実験的に検討し、音声交換における時間的規則性のメカニズムや発達的基盤について明らかにする。初年度である22年度は、マーモセット2個体による自発的な音声交換を観察・分析するための装置の準備、および実験個体の装置への馴致をおこなった。装置内でのマーモセットの発声頻度には大きな個体差が見られたが、ペアによっては飼育室で見られるのと類似した音声交換を示すことが確認された。今後、発声頻度の高いペアを用いて音声交換のタイミングの検討をおこなうと同時に、その他のペアについても音声交換を観察するための条件の探索をおこなう予定である。 発声のタイミング制御の個体差について検討する一環として、マーモセットの利き手の測定法の検討をおこなった。近年の研究により、霊長類において個体の脳の機能的左右差とストレス応答性、そして発声行動の間に関係があることが示されている。例えば、マーモセットには右利きの個体と左利きの個体がほぼ同数見られることが知られているが、左利きのマーモセットと比べて右利きの個体の発声頻度は、他個体が近くに存在することの影響を強く受けることを示している(発声の社会的促進,Gordon & Rogers,2010)。22年度は、マーモセットの利き手を測定するために食物を拾い上げる行動を観察したところ、個体内で安定した反応を記録することが可能であった。今後、発声行動と利き手等の個体の特徴の関係をみるために、対象個体を増やして検討を続ける。
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