平成23年度は、実施計画に挙げたいくつかの具体的なテーマの中から、ゲノム解析等広範な領域で実用化され、理論的研究も進んでいる、線形モデルにおける変数選択問題についてを主に取り上げて研究を遂行した。具体的には、Lasso・Elastic-net・Adaptive Lasso等のスパース推定法(L1正則化推定法)や、種々の多重検定法、さらに近年注目されつつあるリサンプリングを用いたstability selection等、さまざまな方法についての理論的考察と数値的な比較を行い、いくつかの新たな結果を得ることができた。 まず、前年度に提案した、時系列モデルにおけるスパース推定法について、他の時系列モデルでの実用性や、高次元での挙動についてを検証し、既存の方法と比較して有用であることを確認できた。また、回帰モデルにおけるスパース推定法における外れ値への頑健性の低さを解決するための新たなモデルを提案し、モデルに含まれるチューニングパラメータの決定法としてブートストラップ法を用いた情報量規準の適用を提案した。さらに、情報量規準の分散を抑える用途でefficient bootstrap法を用いることで、リサンプリングの回数を減らすことができることを示した。なお、最近の研究においてはfalse positive/false negativeのみならずtrue positiveにも重きを置いており、こうした観点からの比較などが今後の検討課題である。
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