近年、金融工学、医学、工学等、そのデータの多くは非線形時系列モデルに従う事が知られているのでこの非線形時系列モデルの推定が重要であるが、この非線形時系列モデルの代表的な推定量として条件付最小2乗推定量がある。これは明示的な表現を持ち計算が簡単であるため多くの分野で幅広く用いられてきた。しかしながら、私は過去の研究において代表的な非線形時系列モデルであるARCHモデルに対してはこの推定量がほとんど漸近有効とならない事を示した。これは他の非線形時系列モデルに対してもこの推定量がほとんど漸近有効とならない可能性を示しておりこれの代替となる推定量の必要性を示しているのでGodambeとHansenによって創始された推定関数推定量を幾つかの代表的な非線形時系列モデルに用いこの推定量が条件付最小二乗推定量より精度の高い良い推定量である事を示しその漸近有効性のための条件も極めて緩い事を示した。このような利便性の高い推定関数推定量はあらゆる分野での有用性が考えられるので本年度はまずこれを最適ポートフォリオ推定に用いる事を目的とした。ここで最適ポートフォリオとは資産の最適な保有比率のことである。方法としては推定関数推定量に関する過去の研究資料を参考に、また時系列関連の書籍を調べた。また最適ポートフォリオ関連の研究書籍も参考にした。本年度の研究成果として推定関数推定量を用いた最適ポートフォリオ推定量を構成する事ができた。そしてこの推定量が正則条件のもと漸近正規性を持つ事を示した。ここで漸近正規性とは推定量が真の値に収束する事である。つまり推定関数推定量が最適ポートフォリオ推定に対しては推定量として用いる事ができる事が示された。
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