1.久山町研究において心血管病の新たな危険因子の同定に取り組んだ。日本人男性において心血管病発症にQT間隔の延長がリスクになること、脳梗塞発症に対して肥満がリスクになることを明らかにし、国際誌に掲載された。また久山町の高齢者を対象に認知症有病率の時代的変遷を調査し、最近20年間で全認知症、アルツハイマー病の有病率が有意に上昇していることを明らかにし、国際誌に掲載された。肥満や認知症は大きな社会問題であり、肥満や認知症の程度の経時変化と死亡や心血管病発症の同時モデリングは観察研究における非常に興味深い医学テーマだと考えられた。 2.非線形性を柔軟に捉えることが可能なモデル選択アルゴリズムの開発を行った。従来のモデル選択アルゴリズムは、変数を1つずつ追加、あるいは削除してモデルの当てはまりが改善したかどうかを評価している。また非線形な関連を捉えるためにスプラインを用いることが多いが、上記アルゴリズムに従い、まずは線形な影響が評価され、線形な影響が選択された後にスプラインを用いた非線形性が考慮される。したがってそのアルゴリズムを用いるとU時型の関連を持つ因子などではその影響をきちんと評価できないことがあった。私は最初に線形な関連だけを調べるのではなく、非線形な影響も同時に評価するために変数の増加、削減を必ずしも変数1つずつに限定しない方法を考案し、数値実験でその性能を評価した。その結果、従来の方法でその影響を適切に捉えることができなかったU時型の影響がある因子でも、考案したアルゴリズムではその影響をきちんと評価することができた。
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