研究概要 |
測定技術の進化に伴い多様化する医学データから,治療など医療行為の促進に役立つ情報を有効に引き出すための統計手法の開発は進んでおらず,それぞれのデータに適した手法開発が望まれている.本研究では,変数の中に各個体の観測回数が多数あるものを含む医学データのための統計モデルの開発と適用を行う.発展の基礎とするモデルは関数化データに基づく統計モデル"関数化データ解析法"が考えられるが従来の関数化データ解析法は理論の構築と単純なデータ解析による方法論の例示にとどまり実際の医学研究には未だ有用ではない.そこで,応募者は実際の医学データ解析に有効となるような方法論の開発をおこない,さらに実データへの適用から新たな知見を得ることを目指した. 平成22年度は,これまで理論的側面から開発してきた多時点や多地点観測データの平滑化について情報量規準を効率的に用いる方法の実装を行った。情報量規準でモデル選択を行う効率的な方法を提案し,その複雑な解を短時間で計算できる工夫を行い,統計用ソフト上で実行可能となるようプログラムを作成し,数値実験や実データへの適用を通してその有用性を検証した、また実際の医学研究に関する問題では,ある特定の疾患を持つ小児の前頭葉の働きを調べるため,NIRSという技術により前頭葉の複数の箇所で多時点で観測された血流量の分析を行った.このとき観測は多地点でかつ多時点で行われているため,その相関構造を取り込めるモデルにより解析を行った.また,2-DEgelで観測された生後マウス網膜蛋白の成長過程を判別するため関数ロジスティック判別モデルを適用した.提案した手法の特徴により,従来法ではみられなかったサブクラスの存在が示唆された.
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