H23年度は、H22年度に論文発表を行った多目的遺伝的アルゴリズムによるRNA配列設計手法(MODENA)の拡張を行った。まず第1の拡張として、独自に考案した「シュードノットを持つRNA配列の設計に適した遺伝的交差オペレーター」をMODENAに実装した。Pseudobaseデータベースに登録されている既知シュードノット付き二次構造をターゲット構造として用い、シュードノット付きRNA配列設計のベンチマークテストを行った。その結果、MODENAは従来のアルゴリズム(Inv)と比較してより高い配列設計性能を示すことが分かった。また、MODENAでは設計に用いる構造予測法を容易に切り替えることが可能であるという、他のRNA配列設計法にはない特徴を持つ。この機能を利用し、2つの最新のシュードノット付き二次構造予測法(HotKnots、IPknot)を利用したRNA配列の設計がMODENAにより可能であることを示した。これらの成果については査読付き論文として発表済みである。第2の拡張として、RNA間相互作用により構造変化して機能のスイッチングを行うRNA配列(RNAデバイス)の設計をMODENAで可能とするために、配列設計の際に考慮する目的関数の数を従来の2から3以上へ増強した。Breakerのグループから2005年に発表された「オリゴヌクレオチド配列を入力信号としてリボザイム構造へ変化することで別なオリゴヌクレオチドを出力するRNAデバイス」の設計がMODENAを応用して自動化できることを見出した。この成果については分子生物学会年回で発表済みである。H23年度はRNA配列設計アルゴリズム開発の重要性を鑑み、配列設計アルゴリズムの開発と性能評価に注力した。ゲノム配列に対する網羅的なRNA間相互作用の探索については今後も継続して行う予定である。
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