研究課題
薬剤が生体システムに対しておよぼす作用を動的統計モデリングにより時系列遺伝子発現データから抽出する方法論の研究を行った。本研究では薬剤の作用を、時変隠れ変数として状態空間モデルの枠組みでモデル化することにより、薬剤投与・非投与群の時系列遺伝子発現データから抽出する手法の確立を目的としている。本年度は、薬剤耐性能の異なる細胞群の耐性機構の違いの解明を目指した情報抽出手法の開発・適用を二段階に分けて行った。第一段階では、薬剤耐性能の異なる細胞株に薬剤刺激を与えて得られた、それぞれの細胞株におけるケース・コントロール時系列データ(薬剤刺激有・無)に対して前年度より開発を進めてきた手法およびモデルを適用し情報抽出を行った。具体的には肺腺がん由来の抗がん剤(Geftinib)感受性細胞株および、抗がん剤長期暴露により樹立された薬剤耐性能獲得株それぞれから得られた時系列遺伝子発現データを対象とし、各細胞株における薬剤効果の推定を行った。結果、細胞株間で大きく薬剤効果プロファイルの異なる遺伝子モジュールが存在することを見いだした。このようなモジュールに所属する遺伝子群は細胞株間の薬剤耐性能の違いに深く関わることが期待される。第二段階では、上記の肺腺がん由来細胞株データを対象として、前年度に開発した手法を基に、両細胞株間の情報を統合し耐性機構に関わる情報を抽出するモデリング手法を検討し開発を進めた。ここではモデリングを行う上で、第一段階での解析のように各細胞株の情報を別個に扱うのではなく、感受性株データより推定された耐性能獲得前のシステム構造を反映したパラメータの情報を耐性能獲得株のシステム構造のパラメータおよび状態推定に利用する方法を考案し開発を進めた。
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Genome Informatics
巻: 25 ページ: 40-52