本研究課題において最重要となる目的のひとつは、コンピュータを利用したRNAの立体構造予測手法の開発である。その実現のために、平成22年度においてはまず、既知のRNA立体構造群から得られるRNA断片構造を体系化・データベース化する事を目指した。その断片構造データベースの普遍性・可用性を示すために、その断片構造データベースを利用した、RNA立体構造予測プログラムの開発も並行して進めた。ここで開発した手法は、一般にfragment assemblyと呼ばれる手法に類似するものであるが、(1)assemblyに用いるfragment(断片)構造は、RNAの二次構造に基づくものであること、(2)Metropolis Monte Carlo法をいくつかのRNA構造評価関数と共に用いる事で、様々な立体構造を試行・評価しうる手法であること、という点において大きな新規性があると考えられる。このRNA立体構造予測プログラムの成果について、Biwo2010ならびに日本生物物理学会第48回年会において口頭またはポスターによる発表を行い、一定の評価が得られた。特に、RNA-タンパク質間相互作用を研究課題としている研究者らからの反響は大きく、RNAの立体構造を予測する手法の重要性が改めて示され、多大な励みとなった。このRNA立体構造予測プログラムについては、より広範な対象に適用でき、且つより高精度な予測結果が得られるよう改良しつつ、一連の成果をまとめた論文を執筆中である。論文掲載の暁には、広く一般にも公開する予定である。また、RNA断片構造データベースに関しては、RNA立体構造予測は為し得るものの、まだ成果とするには不十分と言える状態であるため、より普遍的で役立つデータベースを目指し、次年度においても改善を続ける。
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