ニューロンは適切なパートナーを識別して結合するが、その分子メカニズムには不明な点が多い。本研究では、プロトカドヘリン(Pcdh)分子群に着目し、神経結合における個々のニューロン識別メカニズムを明らかにする。具体的には、「同一のPcdhを発現するニューロン同士が神経結合する」との仮説を証明する。そのため以下の2点を明らかにする。(i)Pcdh欠損により神経結合が異常になるか?(ii)神経結合するニューロン間におけるPcdh発現は同一か? 今年度は、上記(i)を検討するための研究材料調製として以下2課題を行った。a)個々のバスケット細胞の神経結合を可視化できる遺伝子改変マウスの開発b)Pcdh欠損マウスの作製 まず、課題aに関して、2系統のマウスを作製した。 [1系統目]バスケット細胞特異的なCreER発現マウス(Galnt14-CreERマウス) [2系統目]Cre依存的な蛍光タンパク質発現マウス(VGAT-stop-tdTomatoマウス) 常法に従い、BACプラスミドの改変、マウス受精卵への遺伝子導入を行い、それぞれ9ライン、23ライン、Tgマウスが得られた。現在、発現解析を進めている。なお、VGAT-stop-tdTomatoマウスは既に目的通りの赤色蛍光を発するマウスが得られた。 課題b)に関しては、大阪大学生命機能研究科八木健教授との共同研究によりPcdh-a&b欠損マウスおよびPcdh-g欠損マウスを作製した。現在は解析に用いるべく繁殖を進めている。 これらのマウス作製が本研究計画にとって最も大きなハードルと予想していた。これらのマウスを利用して、来年度は「Pcdh欠損により神経結合が異常になるか?」を解析する。
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