これまでに我々は成長円錐のプロテオームに基づいた新たな成長円錐の機能的マーカー分子の同定を行い、18種類の蛋白質が成長円錐に濃縮し、かつ軸索成長に不可欠であることを証明した。これらの蛋白質を神経成長関連蛋白質(nGAPs)と名付けた。しかし、nGAPsが種々の神経細胞における一般的な成長円錐マーカーかどうかは明らかにしていなかった。 NGFで誘導したPC12細胞の成長円錐を抗体による免疫染色した結果、全てのnGAPsが成長円錐に濃縮されていることが分かった。さらにRNAiによるnGAPsのノックダウンにより、NGF誘導性の神経突起の長さが有意に減少した。これらの結果は、nGAPsが広く一般的な成長円錐マーカーであることを示唆するものである。さらにNGFが誘導するシグナル伝達経路の下流にnGAPsが含まれ、神経突起伸長に関与することが初めて明らかになった。 RNAiによるノックダウン後の成長円錐の面積、およびF-アクチン量を定量したところ、一部のnGAPsにおいて、成長円錐面積およびF-アクチン量の減少がみられた。なかでもアクチン結合蛋白質のCap1や細胞骨格蛋白質のSept2は、ノックダウンで減少した神経突起の長さ、成長円錐面積およびF-アクチン量が、過剰発現により全ての値が増加した。これらの結果は、nGAPsの幾つかがアクチン再編による成長円錐の形態制御を通して、神経突起伸長に関与することを示唆している。 Pacs1ノックアウトマウスはヘテロマウスが得られており、掛合せで得られた胎仔を対象に発現の確認および大脳皮質神経の初代培養で解析を開始した。
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