申請者らはこれまでにラット成長円錐のプロテオーム解析を実施し、945種の蛋白質を同定、成長円錐に濃縮する約100種の蛋白質を明らかにした。これらの蛋白質のうち、細胞骨格関連蛋白質、小胞関連蛋白質数十種をGFP融合蛋白質として成長円錐に発現させて、タイムラプス撮影した。これらの動画を比較することにより、成長円錐における小胞と細胞骨格の関係を調べた。 SCAMP1はゴルジ体以降のリサイクリング小胞のキャリアー蛋白質であり、シナプス小胞蛋白質としても知られている。GFP-SCAMP1をNG108細胞に発現させたところ、成長円錐全体に小胞状の分布を示した。GFP蛍光のkymograph解析で、多数の蛍光点が成長円錐の先導端から中心領域に向かって移動しているのが分かった。さらに中心領域から先導端へ向かう順行性の小胞も存在し、その平均速度は逆行性のものより10倍以上速いことが分かった。これら2種類の小胞輸送と細胞骨格との関係を明らかにするため、mCherry-Actin、GFP-EB3、GFP-dynactin2を発現させて、成長円錐内における動きを追跡した。その結果、小胞がアクチン繊維と共に逆行性輸送される様子が観察できた。また、順行性に移動する小胞の速度が、EB3の観察から求めた微小管の伸長速度やdynactin2の移動速度に一致することを明らかにした。以上の解析により、成長円錐における小胞輸送において、比較的高速な順行性輸送はDynactin2が介する微小管の分子モーターによって制御され、逆行性の小胞輸送がアクチン繊維の逆行性移動と共役することが示唆された。
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