高等動物の網膜において受け取られた視覚情報は平面上の位置関係を保ったまま脳に伝えられる。このようなretinotopyと言われる対応関係は視覚系の様々な階層において見出される。視神経のretinotopy形成については研究が進んでおり、ハエからほ乳類に至るまでWntファミリー分子による軸索走行制御が重要な役割を果たすことが知られている。しかし、脳の視覚中枢におけるretinotopy形成機構はハエでもほ乳類でもほとんど分かっていない。本研究ではショウジョウバエの脳視覚中枢におけるWntファミリー分子の役割に着目し、保存された分子機構を解明する。視覚中枢においてDWnt4は腹側、DWnt10は背側特異的に発現するがDWnt4およびDWnt10の役割は分かっていない。視覚中枢において神経細胞のサブセット特異的に発現する様々なGa14系統にDWnt4変異体を組み込んだ。今後、DWnt4変異体におけるこれら神経細胞の投射パターン異常を解析する。DWnt10については相同組換の手法により変異体を作製した。さらにDWnt4とDWnt10の二重変異体を作製するため、DWnt4変異体バックグラウンドにおいてDWnt10をノックアウトする準備を進めている。抗DWnt10抗体を作製し、DWnt10蛋白がDWnt10を発現する領域近傍の軸索表面に局在していることを見出した。Dfz2の細胞外ドメインを異所発現するとDWnt4蛋白質の局在を誘導することが分かっているが、DWnt10に関してはそのような現象は見出されなかった。Dfz2はDWnt10の受容体ではないのかもしれない。
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