研究概要 |
本研究の目的は、顕著な精神疾患様の行動異常を示し、非常に妥当性の高い精神疾患のモデルマウスと考えられるSchnurri-2欠損マウス(Shn-2 KOマウス)について、脳のどの部分におけるどの時期のShn-2の欠損がこれらの多様な行動学的異常をもたらしているのかを知るために、時期特異的・領域特異的Shn2欠損マウスを用いて行動を解析することである。Shn2 KOマウスは、精神疾患様の行動異常とともに、精神疾患の新たな中間表現型の候補である未成熟歯状回を示している。この未成熟歯状回はShn-2 KOマウスのほかに、Shn-2 KOマウスと非常によく似た行動異常を示すalpha-CaMKIIヘテロKOマウスのなど精神疾患様行動異常を示す5系統のマウスで確認されている。昨年度までに、領域特異的Shn2欠損マウスの作成のため、Shn-2のexon領域の配列をloxP配列で挟んだShn-2 floxedマウスを繁殖させている。このマウスと各部位特異的にCreリコンビナーゼを発現させるCreマウスとを掛け合わせることにより領域特異的Shn2欠損マウスを得ることが出来る。本年度は、loxP配列で挟んだShn-2のexon領域の配列がCreリコンビナーゼによって欠損させられたときにShr2 KOマウスと同様の表現型が得られるかどうかを未成熟歯状回の指標となる遺伝子群をRT-PCRによって定量して確認した。Shn-2 floxedマウスとtelencephalin Creマウスを交配することによってShn-2 Δ/Δマウスを得た。このマウスの海馬を用いて未成熟歯状回の指標となる遺伝子について・T-PCRを行ったところ、ドーパミン受容体1Aの発現が増加し、デスモプラキン、トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼの発現が減少しており、Shn-2 Δ/Δマウスが未成熟歯状回を持っていることが明らかとなった。
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