本研究の目的は、マーモセット脳内ドーパミン受容体の分布をPETにより定量評価し、基礎データを収集することにある。そのために、ドーパミンD1およびD2受容体の放射性リガンドを使い、それぞれの受容体の分布・密度を定量評価する方法を確立することを目指した。これまでに、生後1.5歳以上のコモンマーモセット(Callithlix jacchus)9頭を対象に、PETによるスキャンを行った。PETスキャンは、Siemens社製の動物用高解像度PET装置(microPET Focus 220)を使用して行った。D1受容体の放射性リガンドには[11C]SCH23390を用い、D2受容体には[1C]FLB457と[1C]Racloprideを使用した。さらに、これらの個体からは、MRIによって脳の構造画像も収集した。今年度の成果によって、マーモセットの脳内ドーパミン受容体分布のPETによる定量評価法の確立と、それによるデータベース作成のための基礎データが収集できた。 この成果に基づいて、他の霊長類のデータとの比較や、生後発達過程にあるマーモセットのデータとの比較など、より包括的な研究へと展開していくことが可能となる。霊長類ではドーパミンとその受容体は、認知・行動の諸過程に重要な役割を果たしており、そのシステムの異常は、精神・神経疾患や発達障害と深く関連している。本研究の成果は、高次脳機能の統合的理解や精神・神経疾患のメカニズムの解明、ひいては、治療や予防につながるものと期待される。
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