研究課題
我々は、これまでにAMPA受容体がTARPと呼ばれるタンパク質を介してアダプタータンパク質複合体の1つであるAP-4に結合すること、この結合がAMPA受容体の樹状突起への輸送に必要であることを明らかにしてきた。また、予備実験によりTARPがAP-4だけでなく、他のアダプタータンパク質複合体である、AP-2およびAP-3Aにも結合することを明らかにしていた。今年度、当該補助金の助成をうけて、これらのアダプタータンパク質複合体とTARPとの結合はTARPのリン酸化によって制御されていることを明らかにした。さらに、リン酸化に依存したTARPとAP-2及びAP-3Aとの結合が実際の電気生理学的なシナプス可塑性に必須の役割を果たしていることも明らかにした。シナプス可塑性の一形態である長期抑圧は神経活動に依存してシナプス間の情報伝達効率が長期的に抑制される現象で、記憶・学習の基礎過程であると考えられている。我々はこれまでに、TARPの九つのセリン残基に様々な変異を導入することで、AP-2にのみ結合する変異TARP、AP-3Aにのみ結合する変異TARPを作成することに成功した。AP-2に結合できない変異TARPあるいは、AP-3に結合できない変異TARPを発現させた神経細胞では、長期抑圧の誘導が阻害された。これに対して、野生型のTARPを発現させた神経細胞では、神経活動に依存して、シナプス間の情報伝達が長時間にわたって減少した。これらの結果からTARPとアダプタータンパク質との間のリン酸化による結合制御がシナプス可塑性を巧妙に制御していることが示唆された。
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Nature Neuroscience
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