ヒトの行動制御や精神神経疾患を理解するためには、脳の領野を繋ぐ神経回路やそこでの機能分子の作用が、どのように神経情報の表現とその統合に関わっているかを知ることが重要である。本研究課題では、行動制御に関わる大脳基底核の淡蒼球に焦点をあて、淡蒼球内に存在している投射先の異なる様々な細胞群が、どのような分子的な特徴を有するかを解析する。 ラットの基底核を、クライオスタットを用いてスライスし、レーザーマイクロダイセクションを利用して微少領域及び細胞の切り出しを行った。切り出した組織片及び細胞から微量mRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを得、このcDNAを用いてリアルタイムPCRを行い、神経活動に関与する遺伝子群の発現比較を行った。この結果、8つの遺伝子の発現が前後軸で増減していることがわかった。さらに、これらの研究成果を発展させる為に、逆行性とレーザーをインジェクションしたラット脳を用いて神経細胞をラベルし、且つ、神経細胞を免疫染色した上で切り出す、新たな実験手法の確立を行った。初めに、ラットの基底核をスライスし、組織固定と免疫染色を行った。その後、レーザーマイクロダイセクションを利用して細胞の切り出しを行った。切り出した組織片及び細胞から微量mRNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを得、このcDNAを用いてリアルタイムPCRを行った。通常の免疫染色法では、RNAが破壊されてしまうが、本研究課題により確立した新たな免疫染色法では、短時間の染色によりRNAの分解を押さえることが可能となった。これらの研究手法は、基底核淡蒼球の情報処理をどのような細胞種が担っているかという動作原理の解明につながると考えられる。
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