研究概要 |
テレンセファリンは終脳特異的に発現する細胞接着分子で、樹状突起フィロポディアの形成やスパインの成熟に深く関わっている。これまで、細胞外でテレンセファリンに結合しフィロポディアやスパインの形成を調節する分子は解っていなかった。新たに細胞外マトリックス蛋白質ビトロネクチンとテレンセファリンが結合することを見出した。ビトロネクチンコートしたビーズを培養海馬神経細胞に撒くと、樹状突起に結合しテレンセファリンの激しい集積を起こす。そして、この集積にはリン酸化ERM蛋白質、F-アクチン、PI(4,5)P2など樹状突起フィロポディアに局在する分子を含んでいた。このことから、神経細胞においてテレンセファリンとビトロネクチンとの結合が重要な働きをすると予想し、以下の実験を行った。 1、ビトロネクチン欠損マウスより採取した海馬神経細胞を培養液中にビトロネクチンが有る状態と無い状態で培養した。その結果、ビトロネクチンが無いとHomer1のPSDにおける集積が大きくなった。 2、ビトロネクチン欠損マウス海馬CA1錐体細胞におけるスパインの形態をDiIラベルにより明らかにした。その結果、ビトロネクチン欠損マウスにおいてスパインヘッドの肥大化が観察された。また、スパインの密度はビトロネクチン欠損マウスにおいて減少していた。1,2の結果からビトロネクチン欠損状態において、テレンセファリン欠損マウスと同様にスパインの肥大化が観察された。これらのことからビトロネクチンとテレンセファリンとの相互作用がスパインをコンパクトに保っていることが示唆された。 3、ビトロネクチンコートしたビーズにテレンセファリンが激しく集積することを利用してビーズに集ってくる分子を精製し網羅的に同定した。その結果から、樹状突起フィロポディア形成からスパイン成熟に重要なアクチン重合分子やこれらを制御するキナーゼやG蛋白質を同定した。
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