本研究課題の目的は、シナプス可塑性におけるCaMKIIβのアクチン結合ドメインのリン酸化の役割を解明することである。2011年度では当該リン酸化のin vitroにおける確認などを行った後に、以下のように実験を行い結果が得られた。 1.CaMKIIβのアクチン結合ドメインのリン酸化は、スパインにおいて自身のターンオーバーを制御している スライスカルチャーにおいてphoto-activatable GFPを融合したCaMKIIβのターンオーバーを調べた。偽リン酸化体はターンオーバーが早かったのに対して、リン酸化されないAla体では遅くなっていた。このことから、CaMKIIβのアクチンへの結合はスパインへの局在に重要であることが示唆された。 2.LTP刺激条件下ではリン酸化の影響が小さい スパインの拡大後にCaMKIIβのターンオーバーを調べたところ、WTとAla体では同様のターンオーバーを示した。このことはLTP条件下ではアクチン以外の因子によりCaMKIIβのターンオーバーが制御されていることを示唆している。 3.Ala体はスパインの構造的・機能的LTPの双方を阻害する 1)Glutamate uncagingにより構造的LTPを誘導した際に、Ala体を発現している神経細胞ではスパインの拡大が抑制された。 2)電気生理学的に機能的LTPを誘導した際に、Ala体を発現している神経細胞では電位変化が小さかった。
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