研究概要 |
小脳皮質プルキンエ細胞は、発生時期(誕生日)の同じ細胞どうしが集まり、縦縞状構造を形成する。これは、大脳皮質における層状構造に相当すると考えられるが、その機能的意義は明らかでない。本研究では、各縦縞構造に属するプルキンエ細胞群の入出力の違い・活動の同期性の有無などを電気生理学的に調べ、行動との対応を探る。 1.アデノウイルスベクターを用いて胎生10,11,12日齢の各マウスにチャネルロドプシン2(ChR2)とGFPを発現させたとき、ウイルス導入日に応じて異なる小脳皮質領域に縦縞構造が標識されることを確認した。つぎに、ChR2を発現したプルキンエ細胞のスパイク応答が青色レーザー光刺激によって増加するかを調べた。その結果、麻酔下マウスでは、数十ヘルツの自発発火が2-3倍増加した。さらに、異なる縦縞領域のプルキンエ細胞群を上記青色レーザーにより刺激したとき、刺激領域の違いによって行動にどのような変化が見られるかを調べるべく、慢性実験用小型デバイスを開発した(岩井ら、印刷中論文)。目下、覚醒動物を用いた行動変化については、実験を継続している。 2.ChR2を発現した細胞の活動を単一細胞レベルで操作し、周囲の細胞との位置関係(同一縞あるいは異なる縦構造に属するか、細胞体の距離)に応じた入出力の差異を調べるべく、2光子レーザー顕微鏡を用いた実験を開始した。GFPを発現した細胞(つまり、ChR2を発現した細胞)に、細胞内および細胞外からカルシウム感受性色素を導入することに成功している。
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