23年度は22年度の研究から示唆された、GABA抑制性神経機構の発達によるキンカチョウ歌学習における臨界期の時期の制御、というアイディアをさらに詳しく解析するため、これまでマウスの眼優位可塑性臨界期で明らかになっている臨界期の時期の感覚剥奪による後退とGABA抑制性神経機構の早期増強による促進、がキンカチョウの歌学習にも当てはまるのか研究を行った。特に感覚剥奪をしたうえで、抑制性神経機構を早期に増強した個体における歌の発達を解析し、さらに臨界期終了の分子マーカーの一つである細胞外マトリクスの形成を免疫組織化学的に解析した。 その結果、通常は早期の社会隔離による感覚経験の剥奪により、キンカチョウは学習時期を延長させ、通常の感覚学習期を過ぎた後の聴覚経験から歌学習が行われるが、感覚経験の剥奪と同時に脳内のGABA抑制性神経機構を増強するとその後の学習が行われないことが明らかになった。 つまり、キンカチョウの歌学習の臨界期もマウスの眼優位可塑性のそれと同様、特に感覚学習臨界期は感覚剥奪によりその時期の開始、終了が後退するが、GABA抑制性神経機構の増強により、その時期が促進された。つまりキンカチョウの歌学習においてもGABA抑制性神経機構の発達、感覚経験の有無によりその臨界期の時期が制御されていることが示唆された。 これらの結果は日本動物学会中のシンポジウム、北米神経科学会で発表した他、論文にまとめ投稿するところである。
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