研究課題
マウス嗅覚系では、個々の嗅細胞は多数存在する嗅覚受容体(odorant receptor : OR)遺伝子からたった一種類のみを発現し、同一のORを発現する嗅細胞は、発生の過程で互いにその軸索を収斂させ嗅球の特定の箇所に投射する。マウスゲノムには約1000種類のOR遺伝子が存在することから、嗅覚系の神経回路は約1000種類もの異なるアイデンティティ(個性)を持つ軸索を選別し、正しい箇所へと配線するという非常に高度なメカニズムによって形成される。この過程において、発現するORが様々な軸索ガイダンス分子の発現を誘導することで軸索投射を制御することが明らかとなっている。本研究課題では発現するORがいかにして多種多様な軸索ガイダンス分子の発現制御を可能にしているのか、その発現パターンを産み出す分子機構の解明を目指した。まず我々は、ORを含むGタンパク質共役型受容体がもつリガンドに依存しないbasal activityに着目し、basal activityの度合いを変化させた変異型受容体を嗅細胞に発現させるトランスジェニックマウスを作製した。その結果、basal activityの強さに従って、軸索ガイダンス分子の発現が変わり、軸索の投射位置も前後軸方向にシフトすることが分かった。この結果により、個々のORごとに固有のレベルのbasal activityが軸索ガイダンス分子の発現量を制御することで、前後軸方向の軸索投射位置を規定しているというモデルが立てられた。
すべて 2010
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Cell
巻: 141 ページ: 1056-1067
実験医学
巻: 28 ページ: 1756-1760