今年度は実験計画の実験1:「VGLUT2を含有する軸索の下丘内終末様式の解明」および、実験2:「大型抑制性細胞の3次元再構築」について実験を行った。 実験1について、下丘に投射する全ての脳幹聴覚神経核にSindbisウイルスを注入した。この結果、下丘、蝸牛神経核背側核、内側上オリーブ由来の軸索がVGLUT2を共存した上、それら終末の一部が大型抑制性細胞を取り囲むVGLUT2陽性終末(密集終末)を形成することが判明した。1本の軸索側枝は大型抑制性細胞体上で数個の終末を形成する。つまり、密集終末は多数の軸索、多数の神経核からの収束によって形成されることが強く示唆された。次年度以降は、多数の神経核からの収束を調べるため、2種類の順行性トレーサーを2つの神経核に注入し、同一抑制性細胞上に終末が収束するか調べる。 実験2について、Sindbisウイルスは抑制性細胞に殆ど感染しないことが判明したため、PV-Creマウスとレポーターウイルスを用いて抑制性ニューロンの可視化を行うこととした。さらに、内側膝状体にアデノレポーターウイルスを注入しても下丘で逆行性標識が起こらないことも判明した。このため、下丘に直接レポーターウイルスを注入しなければならない。この際停止コドンの働きが弱いとPVを発現しないグリア細胞などが標識されてしまうため、停止コドンの働きを強めたアデノレポーターウイルスを新規に開発した。次年度以降このウイルスを用いて抑制性ウイルスの形態を調べる。
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