研究課題
本研究課題は、経シナプス順行性・逆行性トレーサータンパクを発現するレンチウイルスを開発・利用し、視床-皮質神経回路におけるシナプス結合特性を、単一神経細胞レベルで解析することを目的とするものである。昨年度に引き続き、(1)経シナプストレーサータンパク(WGAもしくはGFP-TTC)とマーカータンパク(GFPもしくはRFP)を共発現するレンチウイルスベクターの開発・検討、(2)経シナプストレーサータンパク検出系の最適化を行った。(1)共発現型レンチウイルスの開発:Tet-Offシステムを用い、2種の遺伝子を効率的に共発現するレンチウイルスの開発・検討を、成体ラットで行った。昨年度は線条体で検討を行ったが、本年度は皮質・視床で検討を進めた。レンチウイルスを用いた本発現系では、視床では感染数が少なかったため、皮質において定量的解析を進めた。Tet応答性双方向性プロモーター(TREB)下でGFPとRFPを発現させた場合、両者の発現量は感染細胞間でバラツキが非常に大きかった。脳心筋炎ウイルス由来のinternal ribosomal entry site (IRES)を用いた場合、発現量のバラツキは少なかったものの、IRES下流遺伝子の発現量が低下した。手足口病由来の2Aシグナルを用いた場合、GFP・RFP共に強い発現を示した。よって現時点では2Aシグナルが共発現に最も適していると考えられる。ただし、2Aシグナルを用いた場合、2種のタンパクが融合された形で発現されるとの報告もあり、より詳細な検討が必要であると考えている。(2)検出系の最適化:WGAもしくはGFP-TTC(コドンを最適化して人工遺伝子を使用)を単発現するレンチウイルスベクターを成体ラット脳内に注入し、WGAもしくはGFPに対する自作抗体を用い、検出方法の検討を行った。PAP法・TSA法・ABC法を組み合わせることで、免疫活性を検出することに成功したが、未だにシグナルが弱く、定量的解析を行えるレベルには達していない。さらに高感度な検出系の開発が必要であると考えている。
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http://www.mbs.med.kyoto-u.ac.jp/default.html