神経傷害性痔痛は末梢神経系、あるいは中枢神経系の障害によって発症し、自発痛・熱痛覚過敏・触刺激によって激痛を生ずる異痛症を主症状とする。近年、ニューロンの可塑的変化にグリア細胞が積極的に関わっていることが示され、その役割が注目されている。神経障害性疼痛モデルラットにおいてグリア細胞、特にマイクログリアは活性化型となり、末梢神経損傷を受けた髄節の脊髄後角で増加することが知られている。マイクログリアは様々なケミカルメディエーターを放出するが、その一つとして脂質メディエーターが注目されている。その代表的な分子としてアラキドン酸を基質とするエイコサノイド(プロスタグランジン(PG)類、ロイコトリエン(LT)類)が知られている。PGは末梢における発痛に関与することが報告されているが、ロイコトリエンが疼痛伝達に関与する報告は少なく、神経系におけるロイコトリエンの産生細胞、および受容体の発現局在も明らかではない。そのため、神経障害性疼痛モデルラットを用い、LTの産出やそれら受容体の発現動態をRT-PCR法、in situ hybridization (ISH)法や二重ISH-免疫組織化学(IHC)法を用いて検討した。末梢神経損傷後におけるLT合成酵素(5-LO)mRNAが脊髄後角のマイクログリアで有意に増加した。また4種類のLT受容体のうち、末梢神経損傷後3日でCysLT1受容体はマイクログリアで、BLT1受容体が脊髄後角neuronで増加していた。続いて、LT合成酵素阻害薬の髄腔内持続投与を行い、末梢神経損傷によって誘発された疼痛行動を観察したところ、有意に痛みを抑制した。これらのことから神経障害性疼痛が形成される初期段階ではマイクログリアで増加するロイコトリエンが関与することが示唆された。
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