研究概要 |
精神疾患関連タンパク質のうちInterleukin-1 receptor accessory protein-like 1(IL1RAPL1)を培養神経細胞に発現させるとスパイン密度、シナプス密度(Bassoonシグナル)ともに増加することがわかった。更に、培養神経細胞において2本鎖RNAを用いてIL1RAPL1をノックダウンするとスパイン密度、シナプス密度が減少した。IL1RAPL1を繊維芽細胞に発現させ、海馬及び大脳皮質培養神経細胞と共培養すると、繊維芽細胞の周りにシナプス前終末マーカータンパク質であるBassoonが集積することが観察された。すなわち、IL1RAPL1はシナプス前終末を誘導するシナプス形成因子であることが明らかとなった。このシナプス前終末の誘導活性にはIL1RAPL1の細胞外領域のみで十分であることが明らかとなった。IL1RAPL1の細胞外領域をベイトとしたアフィニティークロマトグラフィーによって受容体型チロシンキナーゼ(PTP)δを同定した。PTP8の細胞外領域のイムノグロブリンドメインには3,6,9及び4アミノ酸より構成されるミニエクソンペプチドの挿入の有無によるスプライスバリアントが存在することを明らかにした。IL1RAPL1はミニエクソンペプチドの挿入されたPTPδバリアントにのみ特異的に結合した。さらにIL1RAPL1を発現する繊維芽細胞とPTPδ欠損マウス由来の培養神経細胞を共培養するとIL1RAPL1のシナプス前終末の誘導能は完全に消失した。一方、IL1RAPL1によるスパイン形成とシナプス後終末の誘導もPTPδ依存的であることが明らかになった。即ちIL1RAPL1はPTPδとトランスシナプティック複合体を形成し、シナプス形成を誘導することが示された。
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