アルツハイマー病(AD)では、脳内神経細胞死及びアミロイドβ蛋白(Aβ)蓄積の機構の解明が重要な課題となっている。我々は、(i)血圧調節に重要なアンギオテンシン変換酵素(ACE)が、毒性の強いAβ42をAβ40に変換する活性(Aβ変換活性)を有すること、(ii)Aβ変換活性とangiotensin変換活性は、ACEの異なるドメインに存在することを明らかにした。また、新たにACE阻害剤の長期投与は、ADモデルマウスの脳内神経細胞死を顕著に誘導することを明らかにしている(未発表)。我々は、ACEのAD発症との関わりを解明するため、ACE欠損・APPtgマウス及びACE下流因子angiotensin II receptor Ia (AtgrIa)欠損・APPtgマウスを作成した。これらのマウスを解析に必要な月齢まで飼育維持している。一部必要な月齢に達したマウスについては、脳内神経細胞死の有無ならびにAβ沈着への影響を解析中である。また、我々のWestern blot法を用いて行った実験では、AD患者群血清中のAβ変換活性が正常群に比べ、低下しており、Aβ変換活性の低下とAD発症との関連が示唆されている。
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