研究課題
ACE阻害剤のカプトプリルを低濃度(lowc aptopril)と高濃度(high captopril)を二種類の投与をAPPtgマウスへ11カ月間連続投与し、17カ月齢マウス脳内のアミロイド沈着をthionavinS染色で検討した。加齢対照群マウスの海馬および大脳皮質にアミロイド沈着が検出されたが、過剰用量のカプトプリルがAPPtgマウスの海馬および大脳皮質のアミロイド沈着を顕著に増強した。さらに、臨床に応用されている用量においても、アミロイド沈着の増強が認められた。これらの結果から、ACE抑制が脳内アミロイド沈着を促進することが示唆された。さらに、我々は、アルツハイマー病で良く見られるもう一つの病理像、tauのリン酸化が起きている否かを検討した。対照群に比べ、低濃度カプトプリル投与群では、脳梁神経細胞のtauリン酸化増強の傾向を示したが、有意差が認められなかった。高濃度カプトプリル投与群では、脳梁神経細胞のtauリン酸化が顕著に増強された。これらの結果から、ACE阻害が引き起こしたアミロイド沈着の増加がtauリン酸化を促進したと考えられる。また、高濃度カプトプリル投与群は大脳皮質の神経細胞が明らかに減少し、その局在が乱れていることを判明した。さらに、Aβ42の沈着が増加していることが明らかとなった。APPtgマウス脳内では、顕著な神経細胞死が通常認められていないが、ACE活性抑制APPtgマウス脳の病理像では、神経細胞死を含めアルツハイマー病患者脳の病理像と極めて類似していた。このことは、ACE活性低下がAβ42沈着の増加を招き、アルツハイマー病の発症と関連していることを示唆した。
すべて 2011
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Translational Medicine
巻: 1 ページ: 3-4
10.4172/2161-1025.1000103
Biochimica et Biophysica Acta
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