研究概要 |
IRBITによるCaMKIIα活性制御の分子機構およびその生理的意義を明らかにし、脳神経系におけるIRBITの役割を解明するため、細胞株発現系、培養神経細胞およびIRBITを全身で欠損したIRBIT KOマウスを用いてIRBIT過剰発現またはIRBIT欠損がCaMKIIα活性に及ぼす効果を検討した。その結果, 1.CaMKIIα安定発現HEK-293細胞および胎仔由来線維芽細胞(EF細胞)においてIRBlT発現量に応じてCaMKIIα活性が変化することを明らかにした。 2.IRBIT KO初代海馬培養神経細胞において活性化型CaMKIIα(Thr286自己リン酸化型)の割合が増加していることを明らかにした。 3.蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用したCaMKIIα活性プローブ"Camuiα"を用いてNMDA刺激により生じるCaMKIIα活性化を観察した結果、IRBIT KOマウスから調整した海馬培養神経細胞においてCaMKIIα活性化が有意に亢進していることを明らかにした。 4.IRBIT KOマウス海馬において活性化型CaMKIIαおよび基質であるGluR1のリン酸化の割合が増加している事を明らかにした。 5.IRBIT KOマウスを用いて自発活動活性、オープンフィールド試験、明暗従来試験、高架十字迷路試験、聴覚性驚愕反応試験、バーンズ迷路、T字型迷路、恐怖条件付け試験などの行動解析を行い、行動異常を明らかにした。 これらの結果は海馬神経細胞においてIRBITがCaMKIIαの活性制御を介して記憶学習といった脳高次機能に寄与する可能性を示唆しており、IRBITによるCaMKIIαの活性制御の障害が学習障害、社会性異常といった人における脳発達障害等に関わっている事が考えられる。
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