平成22年度は、シナプス小胞グルタミン酸補充機構と主だった修飾機構について実験を行った。 1、シナプス小胞グルタミン酸充填速度の観測:シナプス小胞内グルタミン酸枯渇後、caged glutamateの光分解によって、誘発性及び自発性シナプス伝達の増加を観察した。興奮性後シナプス電流(EPSC)の回復速度から、小胞へのグルタミン酸充填が、室温(25-27度)において時定数15-20秒であり、シナプス小胞は開口放出に伴う伝達物質の放出からほぼ1分で完全に充填されることを明らかにした。 2、小胞充填機構の温度依存性:生理的条件化(35-37度)では、室温シナプス小胞充填速度の時定数が9秒に速まり、温度依存定数であるQ10は約1.8であることを観測した。 3、小胞充填速度の生後発達変化:生後7日、14日、21日のマウスを用いて充填機構の生後発達変化を定量的に検討した。生後7日では小胞充填時定数は約30秒であったが、14日、21日では15-20秒であった。グルタミン酸輸送タンパク質(VGLUT)は生後発達に伴い発現量が増加することが免疫組織化学的な手法により既に報告されているが、シナプス小胞充填速度も生後発達に伴い速まることが観測された。 4、小胞充填速度のCl濃度依存性:小胞充填の前終末細胞質内Clイオン濃度依存性を定量的に解析した。細胞質Cl濃度が低いと(0.02-2mM)、小胞充填速度は著しく低下するが、細胞質内濃度より高い濃度(2-130mM)では充填速度は有意に変化しない事を明らかにした。 この研究成果は第87回日本生理学会大会で発表した。また、現在査読月論文掲載に報告するため執筆中である。
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