心拍動開始時期での『カルシウムトランジェントが生じているのに収縮がもたらされない』という現象の解明のため、筋小胞体のカルシウムを放出させる作用を持つカフェインを投与する実験を行ったが、反応を見出すことは出来なかった。その為、この時期の心臓の興奮収縮連関においては、筋小胞体の関与が少ない事が示唆された。その証明のため、成獣の心臓ではカルシウムトランジェントの消失をもたらすライアノジンを投与した所、全く反応を示さないと言う新たな知見を得た。次に我々は、細胞膜のL型カルシウムチャネルのブロッカーであるニフェジピンを投与したところ、カルシウムトランジェントは消失した。以上より、心拍動開始時期の心臓においては、心筋収縮の為のカルシウムが、細胞膜のL型カルシウムチャネルに唯一依存している事を証明することとなった。これらの知見をまとめた論文をThe Journal of Physiological Sciencesに投稿し受理された。 『カルシウムトランジェントが生じているのに収縮がもたらされない』という現象が、細胞膜のL型カルシウムチャネルの成長に伴う発現変化に依存する可能性が示唆されたため、次にウエスタンブロット法を用い、チャネル蛋白の発現量の変化を検討すべく実験を行ったが、心拍動開始時期のラットの心臓は非常に小さく、今年度の研究では、チャネル蛋白の発現量の変化を検出するには至らなかった。
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