FOPは200万人に1人の割合で見つかる稀な疾患であり、筋肉や腱、靭帯、関節等が骨化する常染色体優性の遺伝病である。非根治治療ですら極めて困難であるため、FOP発症の分子生物学的機構を詳細に調べることが治療につながる唯一の方法である。先行研究においてFOPの原因遺伝子であるACVR1に患者型の変異を導入した変異型ACVR1とGFPの融合タンパク質を骨格筋において恒常的に発現するTgメダカの作製を試みたところ、細胞膜上に蛍光を示し、かつ筋組織に顕著な表現型を示すファウンダー(FO)を複数得ることができた。しかし、すべてのFOが死亡したためトランスジェニック(Tg)ラインを得ることはできなかった。 そこで本研究では熱ショックプロモーター(hsp)により配列特異的組換え酵素であるCreを発現するTgメダカと、複数のプロモーター制御下でbmp4やACVR1を発現するTgメダカを掛け合わせることで熱ショックにより筋分化異常を誘導できるTgメダカの作製を試みた。筋前駆細胞で発現するデスミンプロモーター制御下にloxP-GFP-loxP-bmp4あるいはloxP-GFP-loxP-ACVR1を持つTgメダカを作製し、hsp::Creメダカと掛け合わせたところ、熱誘導によりGFPの消光と骨格筋形成の異常が確認できた。しかし、非加熱個体でもGFPの減光が見られたため、アクチンプロモーター下にloxP-dsRed-loxP-GFPを持つTgメダカが掛け合わせたところGFPの発現が見られ、非加熱時においてもhspプロモーターによるCreのリークが見られることが判明した。 今後はゼブラフィッシュのhspや人工hspプロモーター制御下でCreを発現するTgメダカを作製し、非加熱時でのCreの発現を抑えたTgメダカの作製を試みる。
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