光受容体・メラノプシンを脳組織に発現させ、光照射によって目的遺伝子の転写活性を誘導するオプトジェネティクス手法を用いた。今まで薬剤処理や熱処理といった物理的ストレスの高い方法で行われてきた遺伝子発現実験が、光照射という細胞にとってよりストレスの少ない方法で行え、また、何より時間・空間的な発現制御が可能となる。本システムの確立は、細胞間相互作用や光情報伝達解析を行うのに大変有用である。 本研究ではこのシステムを生物時計研究に応用した。メラノプシンを生物時計中枢であるマウス視交叉上核(SCN)組織切片に発現させ、光照射により時計遺伝子発現を領域特異的に誘導する事により、振動体領域間カップリングやリズム伝達機構の解析を目指した。 本年度実施した研究内容は以下の通りである。(1)メラノプシン強制発現アデノ随伴ウィルス作製、(2)作製したアデノ随伴ウィルスによる、マウスSCN組織切片におけるメラノプシン発現確認、(3)蛍光指示薬を用いた蛍光Ca2+イメージング測定による、SCNに発現したメラノプシンの機能確認、(4)メラノプシンを発現したSCNにおける光照射による時計遺伝子発現リズム位相変位発光イメージング測定、(5)発光イメージングデータ画像解析プログラム作成。 研究内容(1)~(4)は研究実施計画通りである。ただし、前年度まではアデノウィルスを用いていたが、アデノ随伴ウィルスの方が本実験に適していると判断し、全ての実験をアデノ随伴ウィルスに変えて行った。また、画像解析プログラムを作成し、リズム変位を詳細かつ網羅的に解析出来るようになった。前年度に計画していたペプチドの免疫染色との比較および、薬理実験は行う事が出来なかった。
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