研究課題
本研究は、頭蓋内の感覚運動野に硬膜下電極を留置した患者の協力を得て、患者の思った通りに動き、かつ感覚フィードバックを持つ電動義手の開発と有効性・安全性の検証を行う事を目的とする。平成22年度は計画通り、人工感覚入力を持つBMI用電動義手の作成を行った。H23年度は、開発された電動義手を患者へ適応し大脳皮質再構築を検討する事を目標とした。しかし、対象となる患者の協力が十分に得られず、皮質脳波を用いた感覚フィードバックについて十分な結果は得られなかった。そこで、これまでに得られた患者データから、運動機能障害に伴う皮質脳波の変化を検討した。その結果、運動機能障害が悪化する程、皮質脳波は運動種類に寄らず類似する傾向を示し、運動推定も困難になる事が示された。ただし、麻痺肢に関する運動イメージが保たれている患者では、運動イメージ時の皮質脳波だけで運動種類を推定する事が可能であり、電動義手を皮質脳波だけで制御できる事を明らかにした。これらの結果を臨床神経科学で権威ある専門誌のAnnals of Neurology誌に掲載した(2011年8月)。本研究は世界で初めて麻痺患者の皮質脳波を用いて電動義手を制御し、皮質脳波BMIの臨床応用の可能性を示した点と、運動機能障害に伴う皮質脳波の変化を定量的に示した点で臨床及び基礎神経科学の両方で重要な成果である。また、研究計画に示した通り、脳磁図など非侵襲的検査による運動推定精度の検討を行った。皮質脳波と同じ運動課題を脳磁図で行い、正常被験者もしくは運動機能障害患者が運動を施行もしくは想起した際の活動を記録した。得られた脳磁図から運動を推定すると、正常被験者では約6-7割の精度で3種の運動を推定できた。また、運動機能障害患者でも、やや精度は劣るが同等の推定精度を得ることができた。これらの結果の一部をNeuroReport誌に掲載した(2012年1月)。
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