感覚情報の統合および運動出力の過程における上丘の機能的役割を研究し上丘神経細胞のオシレーションが動物の反応速度を規定することを発見した。実験動物としてラットを用い視覚と聴覚情報の統合を動物の反応速度によって推定できる行動課題を学習させた。この動物の上丘にテトロード電極を慢性的に埋め込み、行動課題遂行中の単一神経活動および局所電場電位を計測した。その結果、動物の反応速度は左右の上丘の活動のバランスに規定され感覚情報の統合はこのバランスを大きく傾けることによって反応速度を促進していることを見出した(論文投稿中)。また上丘の局所電場電位がこの課題遂行中にθレンジの周波数で振動しており、この振動の周波数に対して適切なタイミングで神経スパイクが発生することによって動物はより素早く反応できることを見出した。神経活動と行動の因果関係を明らかにするためラットにおいてレンチウイルスを用いたチャネルロドプシン遺伝子の感染系および、光刺激によって神経活動を制御する実験系を確立した。チャネルロドプシンまたは電気刺激実験により大脳皮質視覚野の活性化が上丘の神経活動に影響し感覚情報の統合を模倣することを発見した。この結果はこれまで全く知られていなかった上丘での神経活動の振動が感覚情報の統合および感覚運動変換において重要な役割を果たすことを示唆している(論文投稿準備中)。この内容は第40回の北米神経学会および包括脳ネットワークワークショップにおいて発表した。
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