研究概要 |
本年度は聴覚・体性感覚において刺激呈示後約100ミリ秒(Nlm,Plm)に出現する皮質応答が感覚記憶に依存するかどうかについて脳磁図を用いて検討した.皮質の変化関連応答が感覚記憶に基づくことを証明するために,4種類の試行間間隔(0.5,1.5,3,6秒)を用いて実験を行った.体性感覚刺激にはトレイン電気刺激を用いて刺激の呈示時と消失時をトリガーとした.特に何の刺激もない状態(0.5~6秒)から刺激を呈示する条件と,トレイン電気刺激を呈示している状態(0.5秒~6秒)から刺激を消失する条件で実験を行った.どちらの条件においても体性感覚野の変化関連応答(Plm)が試行間間隔の延長に伴い,増大した.このことは刺激変化までの前事象の長さが感覚記憶によって保持され,その保持された前事象と新たに起こった事象との変化量に依存して変化関連応答が誘発されたことを示している.同様の実験を聴覚でも行った.ただし,聴覚においては刺激の呈示,刺激の消失,刺激の変化の3条件を設定した.刺激の呈示と刺激の消失においては1000Hzの音の呈示と消失をそれぞれの試行間間隔で呈示した.一方,刺激の変化条件では1000Hzの持続音を呈示後,1100Hzの音に変化させた.実験の結果,3条件ともに変化関連応答は試行間間隔の延長に依存して増大した. 体性感覚・聴覚の二つの実験結果から各感覚に共通し,変化検出のための神経ネットワークが存在し,これらが感覚記憶を基にして誘発されることを示した.
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