ヒトの生存には感覚系に発生したあらゆる変化を素早く察知し,その変化に注意を向け,情報を吟味し,適切な行動へのドライブを発生させる変化検出のための神経機構が必要不可欠である.もし,変化検出の神経機構が存在するならば刺激の呈示のみならず,刺激の消失にも応答するはずである.これまでの脳磁図を用いた研究で,各刺激(電気刺激や音刺激)の呈示と消失に共通して賦活する脳部位が各感覚野(体性感覚野や聴覚野)にあることを報告した.さらに,刺激の変化の大きさに依存して脳活動が大きくなることを報告した.それらの脳活動には感覚記憶が関与していることを体性感覚実験・聴覚実験によって証明した。今後の研究として,オドボール刺激を用いて体性感覚刺激の場所同定に関わる領域について解明する. 申請者はオドボールの体性感覚刺激を用いて,体性感覚刺激に対する場所同定がどの脳領域で行われるのかについて検討した.オドボール刺激を2指に呈示し,2指が近い場合は場所同定に関する脳領域の活動は小さく,2指が遠い場合は場所同定に関する脳領域の活動が大きくなると予想される.具体的には,逸脱刺激は常に示指とし,標準刺激を(条件1)手の親指,(条件2)手の小指,(条件3)足の親指とする.どちらの条件においても標準刺激と逸脱刺激の割合は同一とし,逸脱刺激を与える示指はすべての条件で変えない.逸脱刺激に対する反応をそれぞれ比較した.その結果SI/PPCの活動が場所逸脱の大きさに依存し大きくなることが明らかとなった.
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