研究課題/領域番号 |
22700441
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
川口 拓之 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (60510394)
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キーワード | 生物・生体工学 / 脳微小循環 / 生体医用光学 / 脳血流 |
研究概要 |
本研究では小動物のマクロスコピックな血行動態変化の計測に用いられる内因性光イメージング(OISI)で得られる信号と共焦点レーザー顕微鏡と多光子励起蛍光顕微鏡で計測した毛細血管レベルの空間分解能で捉えた脳微小循環ネットワーク構造や脳活動に伴う赤血球の流れや個数の変化、血管の膨張収縮との関連を実測データに基づいたシミュレーションを行うことで明らかにすることを目的としている。シミュレーションモデルを構築する上で必要となるのは血管ネットワークの幾何学的構造、生体組織における光学特性値、脳機能賦活時の血流変化の度合いである。本年度は、多光子励起顕微鏡を用いて脳微小循環ネットワークの3次元形態画像を計測し、それを基にOISIのシミュレーションのためのモデル構築を行う手法を確立し、さらに、構築したモデルにおける光伝播解析を行う環境を整えることを目的とした。 多光子励起顕微鏡を用いて脳微小循環ネットワークの3次元形態画像では血しょうに蛍光試料を流すことで血管内腔からの信号を捕らえるが、内径が赤血球の大きさよりも小さな毛細血管では血管が途切れてしまうことや特定の試料は血管から脳実質に漏れてしまうことといった問題点があった。この問題は計測パラメータの最適化や適切な蛍光色素を選択することで解決された。また、多光子励起顕微鏡で捉える3次元画像では深部を計測する際に、脳組織による光散乱の影響でSN比が低下する。この問題にはエッジ保存フィルタのひとつであるNon-local means(NLM)フィルタを適用することを試みた。NLMフィルタは計算コストが膨大であるためGPGPU技術による並列演算で高速化した。GPGPU技術は光伝播シミュレーションモデルの高速化のためにも必須であり、次年度に向けた準備もできたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた3次元脳微小血管ネットワークの撮像法の最適化やGPGPUによるプログラミング技術の習熟などのシミュレーションの準備が計画通り進展した。
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今後の研究の推進方策 |
多光子励起顕微鏡で計測したデータをもとにOISIのシミュレーションを行い、実測結果とシミュレーション結果を比較することによりOISIへの微小循環パラメータの寄与を考察する。シミュレーションの光伝播はモンテカルロ法を用いて光輸送方程式を解析することによって求めることを予定しているが、モンテカルロ法は求解に統計的安定性を必要とするため,膨大な計算コストを要する。これはGP:GPUによる並列演算によって対処する。
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