研究概要 |
本研究では小動物のマクロスコピックな血行動態変化の計測に用いられる内因性光イメージング(OISI)で得られる信号と共焦点レーザー顕微鏡と多光子励起蛍光顕微鏡で計測した毛細血管レベルの空間分解能で捉えた脳微小循環ネットワーク構造や脳活動に伴う赤血球の流れや個数の変化、血管の膨張収縮との関連を実測データに基づいたシミュレーションを行うことで明らかにすることを目的としている。シミュレーションモデルを構築する上で必要となるのは血管ネットワークの幾何学的構造、生体組織における光学特性値、脳機能賦活時の血流変化の度合いである。本年度は、これまでの研究で開発してきた技術を発展させるとともに、多光子励起顕微鏡で得られるデータをも とにOISIのシミュレーションを行い、実測結果とシミュレーション結果を比較することによりOISIへの微小循環 パラメータの寄与を考察することを目的とした 多光子励起顕微鏡で得られる3次元血管構造をもとにOISIのシミュレーションを行ったところ、OISIで用いられることが多い500-600nmの波長帯において、血管の部分実効光路長は全光路長の10%程度であることがわかった。一方、血管構造を動脈、毛細管、静脈、に分類するとそれぞれ5.5%, 7.8%, 86.7%であった。実測においてはOISIの信号変化は3%前後であり、ひげ刺激時の動脈の拡張率は脳表で15%, 脳内で10%程度であったことから、動脈の拡張のみではOISIの信号変化よりずっと小さな信号変化しか得られず、顕微鏡の空間分解能では評価が困難な毛細血管や静脈の受動的な拡張や局所のヘマトクリットの増減をコントロールするための血流分配機構の存在が示唆された。
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