研究概要 |
生殖線刺激ホルモン放出抑制ホルモン(gonadotropin-inhibitory hormone, GnIH)は、下垂体からの生殖線刺激ホルモンの放出を抑制するペプチドホルモンとしてウズラの脳より発見された(Tsutsui et al., 2000)。申請者らの研究から、高い社会性を示す鳴禽類キンカチョウ脳にもGnIHが存在し、生殖内分泌系を上流で制御する可能性が示唆された(Tobari et al., 2010)。さらにGnIHに対する抗体を用いた免疫組織化学染色の結果より、GnIHニューロンが生殖内分泌系のみならず、中脳腹側被蓋野や中脳中心灰白質などの社会性行動の動機付けや報酬に関連した脳領域(中脳ドーパミン系)にも神経投射していることが明らかとなった。 また申請者らは、GnIHと同じRFaファミリー(C末端側がRFamide構造を持つペプチド)に属する25アミノ酸基からなる新規視床下部ペプチドをキンカチョウの脳から単離・同定し、その受容体も併せてペプチド前駆体のcDNAの同定も行った。さらに、25残基のRFaペプチドとその受容体のmRNAの脳内分布をin situ hybridization法を用いた解析を行った。その結果から、25残基のRFaペプチドとその受容体の系が、本能行動制御、社会性行動制御、空間記憶本能力、脳の雌雄差形成等の様々な脳機能との関連が示唆された。現在、新規RFaペプチドの本能行動制御の可能性にも着目し、25残基のペプチド前駆体のmRNAの動態解析を行っている(J neuroendocrinol誌に投稿済み、現在リバイス中)。
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