研究概要 |
生殖線刺激ホルモン放出抑制ホルモン(gonadotropin-inhibitory hormone,GnIH)は、下垂体からの生殖線刺激ホルモンの放出を抑制するペプチドホルモンと発見されたが(Tsutsui et al.,2001)、申請者ら前年度の研究から、GnIHニューロンが求愛行動の動機付けに関連した中脳ドーパミン系に神経投射していることが明らかとなり(Tobari et al.,2010)、求愛行動のモチベーション制御にGnIHが関与することが示唆された。 本年度は、求愛行動へのモチベーションが異なるような環境におかれたオス個体の間脳内GnIH mRNA発現をリアルタイムPCR法にて比較した。その結果、メス個体への求愛行動へのモチベーションが高い状態にあるオス個体のGnIH mRNA発現に変化があった。次に、中脳ドーパミン神経系に対するGnIHの作用を明らかにするため、腹側被蓋野、中心灰白や黒室領域を含む脳切片に、抗GnIH抗体と抗チロシン水酸化酵素(TH)抗体を用いて二重染色し免疫組織学的に検討した。その結果、GnIHニューロンの神経終末がドーパミン作動性ニューロン細胞体の近接に観察された。さらに、GnIH受容体をクローニングし、その脳内分布をin situ hybridizationと抗TH抗体を用いた免疫組織化学染色との組み含わせた方法により、腹側被蓋野のドーパミン作動性ニューロンがGnIH1受容体を発現していることを確認した。これらの結果について第36回日本比較内分泌学会大会や7th congress of Asia and Oceania society for comparative endocrinology等国内外の学会で報告した。
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