研究課題
疾患モデルおよび遺伝子改変マウスは、病態を分子レベルで解析する上で非常に有効なツールである。一方、大腸がんは近年の食生活の欧米化などにより罹患率が大きく上昇しており、その予防法および治療法の開発が強く求められている。そして、このようながんの発症過程の研究には動物個体を用いた研究は欠かせない。そこで本研究では、炎症性サイトカインの大腸がん発症における役割を明らかにすることを目的として、大腸がんの疾患モデルであるApc^<Min>マウスとサイトカイン遺伝子欠損マウスを用いて研究を行った。本研究では、特にIL-1/IL-17ファミリー分子に注目し、これまでに我々が独自に作出したIL-1/IL-17ファミリー遺伝子欠損マウスとApc^<Min>マウスを掛け合わせて作出した多重変異マウスにおける腸管ポリープ形成能を評価した。Apc^<Min>-Il17a^<-/->Il17f^<-/->マウスにおいて腸管ポリープ形成が有意に減少することを見出した。一方、Apc^<Min>-Il17a^<-/->、Apc^<Min>-Il17f^<-/->いずれのマウスでも腸管ポリープ形成の減少が認められたが、Apc^<Min>-Il17a^<-/->Il17f^<-/->マウスには及ばず、IL-17AとIL-17Fのそれぞれがポリープ形成に促進的役割を担っていることが示唆された。そこで、IL-17AとIL-17Fそれぞれに対する中和抗体を用いてApc^<Min>マウスに投与し治療実験を試みたところ、単独および共投与で大型のポリープ形成を抑制することができた。また、Apc^<Min>-Il1rn^<-/->マウスの結果からIL-1の過剰シグナルがポリープ形成に促進的に作用することがわかっていたが、これは1型受容体(IL-1R1)を介したシグナルの可能性があることを見出した。これらの結果から、IL-1/IL-17のシグナルが大腸がん治療の分子標的となりうることが示唆された。
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