研究概要 |
神経堤細胞における遺伝子発現の責任となるエンハンサー領域と、そこに結合する転写因子を同定するため、エンドセリンA受容体(ETAR)遺伝子プロモーター領域のルシフェラーゼアッセイを行った。これにより、転写開始点近傍で2つの転写因子がタンデムに結合する配列約30塩基の欠失もしくは変異導入によって転写活性がほぼ消失すること、この配列をタンデムに結合してエンハンサーなしのプロモーターに結合して、転写活性が上昇することが明らかになった。トランスジェニックマウスによる生体内の神経堤細胞でのエンハンサー活性については、最初の試行では高発現マウスが得られず、現在検討を進めている。 一方、RMCEを用いた遺伝子ノックインマウスの解析では、心発生初期におけるETAR発現細胞群を心流入路に生じる一次心臓領域の亜集団として特徴的な動態を示すこと、エンドセリンシグナルがERKリン酸化やTbx5遺伝子発現を促進し心室形成に役割を果たしていることを明らかにした(Asai et al., Development 137:3823,2010)。一方、エンドセリンは神経堤細胞に作用して、大血管のみならず冠動脈の形成にも関与していること、血管形成への関与は顎顔面の形成と異なり、Dlx5/Dlx6による領域パターニングには依存しないことを明らかにした。 Cre発現アデノウィルスとノックインベクターを用いた受精卵での遺伝子導入の検討では、lacZ発現アデノウィルスの感染によって高い発現が受精卵で得られたものの、その後の胚発生率に悪影響を及ぼすため、現在当初より第2案として予定していた、卵子特異的Creを発現するZP3-Creマウスを用いた卵子におけるRMCEを試みるため、準備を進めている。
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