初年度のセットアップから行ったが、技術的に他研究分野にも応用可能と考えられる成果が得られた。また、予備的な結果ではあるが、高等霊長類に特徴的な形態を示す可能性のある神経細胞の解析を試みている。 以下技術的成果について述べる。 本実験系で用いている凍結保存法によってサル大脳皮質組織が最長6年という長期保存期悶に耐え得ることが分からた。すなわち長期凍結保存の後に得られた初代培養神経系細胞は、凍結を行わない、もしくは、短期保存後の培養の際と類似した、形態および代表的タンパク質発現の特徴を示した。 本実験系においては、材料の希少性のため、採材した大脳皮質組織を小分けにして凍結保存し、培養試行毎に融解利用している。株化細胞等の凍結保存とは異なり、組織の状態において凍結保存を行うことはそれほど一般的とは言えず関連した知見も少ない。だが、近年飛躍的に発展を遂げている再生医療分野においてiPS細胞バンク構想が進行している現在、大脳皮質組織状態での長期保存の知見は本実験系のみにおけるメソドロジー以上の意味を有する可能性がある。すなわち、移植の必要性が生じる以前にiPS細胞からあらかじめ分化を誘導し保存することが検討されているが、その際、分化程度の高い状態での保存の傍証として、もしくは細胞シート等、より発展的な生体材料を保存することが検討される際に、本成果は示唆を与え得ると考えている。 次年度以降は、神経細胞の形態変化を中心に解析を進めるが、本年度得られた技術的な成果についてもさらなる応用を求めていく予定である。
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