本研究は、メラノーマ自然発症モデルマウス(RETトランスジェニックマウス)を用い、腫瘍関連の新規バイオマーカーを見出すことを目的としている。本年、RETトランスジェニックマウス及びEdnrB(+/-)/RETトランスジェニックマウスのうち、RETトランスジェニックマウスの準備を行った。10カ月齢の本マウスでは、尾、背部等に直径10mm以上の腫瘍が自然発症しており、外見的に明らかな転移が見られた。これらのマウスでは血清中に転移に関わり有用な転移関連バイオマーカーとなりうる因子が含まれることが期待される。そこでこれらのマウスの顎骨後静脈より血液を採取し、血清プロテオームの解析を試みた。血清プロテオームを用いたバイオマーカー探索では、アルブミンやイムノグロブリンの除去が重要となる。そこで市販キットを用いてこれら血清の大部分を占める蛋白分子を除去し、解析に用いた。二次元電気泳動によるスポット解析を行い、腫瘍マウスで増減がみられる複数の分子を解析した(分子同定作業中)。一方、TNF-alphaは腫瘍の増悪に関与することが報告されている、そこで、Retトランスジェニックマウスより独自に樹立した腫瘍細胞を用いて、TNF-alphaによるインベージョンアッセイを試みたところ、有意な細胞浸潤能の増強が見られることが確認できた。炎症・ストレス関連のフォーカストDNAアレイによる遺伝子発現の差異を検討したところ、増加遺伝子11(接着分子、炎症性サイトカイン、C-X-CケモカインC-Cケモカイン)、低下遺伝子2(抗アポトーシスタンパク、リン酸転移酵素)を見出した。今後、これらの分子に着目し、有用なバイオマーカーとなりうるかどうか検討する。
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