研究課題/領域番号 |
22700458
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
伊藤 亮治 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部・免疫研究室, 研究員 (60425436)
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キーワード | ヒト化マウス / アレルギー / ヒト抗体産生 |
研究概要 |
本研究ではヒト免疫系を再構築させたヒト化マウスを作製し、細菌、ウィルス、寄生虫等の感染症抗原および癌抗原、アレルゲン等、多種多様な抗原に対する抗体産生応答を始めとしたin vivoヒト免疫反応を観察できるヒト化モデルマウスの開発を目的としている。本ヒト化マウスは創薬研究としての利用のみならず、新薬の前臨床試験やヒト免疫細胞分化、機能解析等の基礎的研究にも有用であり医療への貢献が充分期待できる。 平成23年度は、以下2系統のTgマウスの解析を行った。 1)ヒトIL-3/GM-CSF Tgマウス ヒトIL-3/GM-CSF TgマウスへヒトHSCを移入し、末梢血、脾臓、骨髄、肺胞洗浄液におけるヒト免疫細胞をフローサイトメトリーにて解析した。その結果、全ての臓器において単球や顆粒球などのヒトミエロイド系細胞の分化亢進が見られ、これまでのヒト化マウスでほとんど観察されなかったヒト好塩基球、好酸球、マスト細胞などのアレルギー関連免疫細胞の分化が認められた。また分化したヒト好塩基球、マスト細胞は、in vitroでFcεRを刺激することによりヒスタミンを産生する事から、本ヒト化マウスはヒトアレルギーモデルマウスとしての応用が期待される。 2)HLA-DR4 Tgマウス 日本人の約13%に見られるHLA-DRO405ハプロタイプをNOGマウスに導入したHLA-DR4 Tgマウスを樹立した。本TgマウスへHLAハプロタイプが一致したHSCを移入し、OVAを免疫して血清中のヒト抗体価を測定したところ、約半数の個体でOVA特異的IgG抗体の産生が認められた。さらに分化したヒトT細胞のTCR刺激により、正常ヒトT細胞と同程度の増殖性が認められ、従来のヒト化マウスで成し得なかったT細胞機能の亢進が示された。正常T細胞機能を有する本ヒト抗体産生モデルマウスは、治療用ヒト抗体開発の一助に成り得る有用なツールである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HLA-DR4 Tgマウスに関しては、3年計画の2年目でヒト抗体産生モデルとしての評価を終え、論文として報告出来た。またIL-3/GM-CSF Tgマウスの解析により、これまで不可能であったin vivoヒトアレルギーモデルマウス実現の可能性を見出せたことは当初の計画を上回る結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
1)ヒト化IL-3/GM-CSFTgマウスへダニや花粉などのアレルゲンを投与し、ヒトアレルギー反応をin vivoで誘導する。具体的にはアレルギー患者の血清に含まれる抗原特異的IgE抗体の皮内投与によるPassive Cutaneous Anaphylaxis(PCA)テストを行う。 2)HLA-DR4 TgマウスとIL-3/GM-CSF Tgマウスを交配し、抗原特異的IgE抗体を自発的に産生できるヒト化マウスを樹立する。本トリプルTgマウスにより、様々なアレルギー応答を容易に引き起こす事が可能となり、抗アレルギー薬の開発、評価などに応用できる。
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