(1)カニクザル分離株の全塩基配列の決定 カニクイザル感染臓器乳剤からイヌSLAM発現Vero細胞で分離されたCDV/dog-Vero、それをヒトSLAM発現Vero細胞に馴化したCDV/human-Veroの全配列決定を行った。馴化により、Hタンパク質に1アミノ酸変異が認められた。Hタンパク質の系統解析では、アジア1型に分類され、同時期に中国のアカゲサルから分離されたCDVと近縁であった。Hタンパク質及びFタンパク質でCDV株間で高度に保存されているに領域でそれぞれ4及び8箇所のアミノ酸変異が認められた。流行初期・後期の感染サル臓器のCDVのH遺伝子配列もCDV/dog-Vero型であり、イヌSLAM発現Vero細胞で効率よくウイルス分離できたことと一致した。 (2)CDV遺伝子検出系の構築・導入 実験動物用サルでの高感度CDV遺伝子検出システムとして、ウイルスや感染臓器を用いて検証したRT-PCRを確立した。また、感染細胞からRNA抽出を熱変性のみで行う迅速・簡便なDirect RT-PCRを確立した。 (3)動物感染実験 CDVカニクイザル分離株のサルへの経鼻接種を行った。全ての実験感染サルは、15日間の観察期間中生存したが、CDV/dog-Vero感染サルの4/5、CDV/human-Vero感染サルの1/4で、PBMC・呼吸器・消化器等の多くの組織・臓器からCDVが分離され、全身性CDV感染症が再現できた。CDV/dog-Vero感染サルでのみ感染性ウイルスの排泄が認められた。CDV/dog-Veroは、CDV/human-Veroと比べ、PBMCへの感染では差は認められないが、上皮系を含む組織では親和性が高いことがわかった。
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