研究課題/領域番号 |
22700468
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中路 正 富山大学, 事務局, 特命助教 (10543217)
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キーワード | キメラタンパク質 / 人工ニッシェ / 細胞移植用材料 / パーキンソン病 / 幹細胞移植医療 / 分化誘導 / ドーパミン神経 / 再生医療 |
研究概要 |
本研究では、中枢神経疾患の一つであるパーキンソン病に対する細胞移植治療に貢献できるバイオマテリアルの創製を最終目標として、生体内において細胞を厳密に制御している微小環境を模倣した材料(人工ニッシェ)の創製に向けて研究を進めてきた。 本年度は、前年度までの研究で得た、材料構築のための重要な基礎的知見(特許出願済,論文投稿準備中)を踏まえて、細胞移植用材料のプロトタイプと位置付けたコラーゲンベースハイドロゲルのin vitroでの有効性評価、および、in vivoでの実用性評価を進めてきた。 神経幹/前駆細胞接着性を持たせるために、ラミニン由来キメラタンパク質を担持させたコラーゲンゲルは、細胞にとって良い接着足場となることがinvitro評価で明らかになった(論文掲載済)ことから、そのハイドロゲルを用いて移植した神経幹細胞の生着率について評価した。その結果、本研究で開発したハイドロゲルを用いることにより、移植神経幹/前駆細胞の初期生着率を約40%に向上させることができることが分かった(論文投稿中)。 しかしながら、未だ40%程度であり、更なる生着率向上が必要だと考えた。接着足場として、また、移植場の炎症細胞からの物理的防御壁として機能するハイドロゲルに、初期炎症反応を即時に鎮静化させる能力を新たに付与させることとした。そのために、抗炎症性サイトカインを炎症反応誘発時にだけ放出させることのできるIL10キメラタンパク質を創製し、そのタンパク質のin vitroでの機能評価を行った。その結果、IL10キメラタンパク質は、目的通り、脳内の炎症細胞である活性化ミクログリアから神経幹/前駆細胞を保護することができることが分かった(論文投稿準備中)。来年度は、このタンパク質を担持させたコラーゲンゲルを用いたin vivo評価を行い、実用性について検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトタイプと位置付けて創製した神経幹/前駆細胞接着性コラーゲンゲルのin vivo評価で、予想以上の結果が得られたことが挙げられる。昨年度、本年度の研究で、研究目的として掲げたことが、期待通りにうまくいき、論文投稿準備にまでこぎつけていることから、達成度は申し分ないと考える。さらに、そのin vivo評価結果から、更なる改良点や新たなアイディアが見つかったことから、今後の研究の広がりが大いに期待できることが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた知見を踏まえて、構築したゲル材料のin vivo評価を進める。In vitro評価結果から、確実にポジティブな成果が得られると予想されるが、新たな改善点が見つかることも考えられる。特に、移植細胞の生存率を向上させたとしても、その生着細胞が組織再生に働くかは、未知数であり、研究を進めなければ見えてこない。そこで、最終年度となる平成24年度は、これまでに構築した材料の有効性を立証するとともに、材料の実用化を見据えた、更なる改善点の洗い出しなども行っていくことを予定している。
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