研究課題/領域番号 |
22700469
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
門之園 哲哉 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (10510282)
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キーワード | バイオセンサー / 腫瘍内低酸素微小環境 / 生体イメージング / 低酸素応答 / タンパク質分子設計 |
研究概要 |
低酸素条件下では細胞内でシグナルを発するが、通常酸素条件下ではシグナルが消失する「バイオセンサー型プローブ」の開発を行った。そのために、細胞の低酸素応答で中心的な役割を果たす転写因子HIFの細胞内存在量を規定しているpVHLタンパク質をscaffoldとした分子設計を進めた。昨年度は酸素濃度依存的なpVHLの分解システムを応用しようとしたが、培養細胞の内在性pVHLのタンパク質量を解析すると酸素濃度依存性がほぼ見られないことが分かり、プローブへの適用は難しいと考えられた。そこで本年度はpVHLの立体構造変化に着目した分子設計を行った。pVHLは低酸素条件下ではSUMO化酵素PIAS4の活性によりSUMO化されて核内へ移行するが、PIAS4との相互作用時やSUMO分子の結合時には構造変化を伴うことが予想される。そこで特定の構造をとった時にのみシグナルを発するプローブの作成を目指し、タンパク質分子の構造変化と蛍光色素のH型ダイマー形成による、消光-蛍光スイッチング現象を組み合わせた応答性プローブの作成を行った。まず、pVHLタンパク質の立体構造を基にしてアミノ酸を2個ずつ選び、それらをシステインに置換した11個の変異体を設計した。これらの変異体を精製し、導入したシステイン残基を蛍光色素TAMRA-マレイミドで標識した。さらにネイティブ状態と界面活性剤で変性させた状態とで蛍光強度を測定したところ、構造変化に伴う蛍光増加が確認できた。このことは、pVHLの構造変化を蛍光シグナルで検知できることを示しており、応答性プローブの開発のための大きな成果である。同時に、色素のH型ダイマー形成をタンパク質分子内で容易に実現できることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、色素のH型ダイマー形成を人工的に組み込むことで、タンパク質構造変化を利用したシグナル発信モジュールを作成できることが明らかになった。これは環境検知プロープの分子設計法の開拓において大変有用な成果である。さらに、細胞膜透過ペプチドを融合した細胞内デリバリー技術も評価中である。今後はプローブの応答性評価をしながら構造最適化を行うことで、低酸素環境検知プローブを作成する。
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今後の研究の推進方策 |
まず、細胞膜透過ペプチドを融合させたプローブを作成し、培養哺乳類細胞を用いて低酸素応答性を評価する。またMDシミュレーションを行って最もシグナル強度が変化する色素導入位置を計算し、実際に作成する。さらに近赤外蛍光を発する色素に変更して標識し、in vitro評価、in vivo評価を行う。
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