研究概要 |
本申請研究は,次世代の神経用途電極の可能性として,優れた物理化学的特性を併せ持つカーボンナノチューブ(CNT)バンドルを用いた新規電極の開発を行い,その神経インターフェイスとしての性能を,生体神経組織/細胞を試料とした電気生理学実験によって定量的に評価することである。今年度は,1)CNTバンドルの表面に対してシリコーンエラストマーを顕微塗布するための電動マイクロマニュピレータ制御装置を構築した;2)先端部以外が絶縁被覆されたCNTバンドル電極の作製と電気的特性の計測を繰り返し,作製方法/手順の改良を行った;3)電極の先端露出部直径は300nm以下,生理食塩水中での電気インピーダンスは0Hzで100MΩ以下,1kHzで2MΩ以下,通電可能電流は1kHzで±100nA以上となり,細胞内刺入に通常用いるガラス微小電極の使用水準を上回った。さらに予備実験ながら,4)ラット網膜組織より急性単離した単一神経細胞の細胞内へ,CNTバンドル電極先端を刺入し,電圧印加刺激によって活動電位発火を誘発することに成功した。以上により,微細な先端径を持つと同時に,良導電性と生体親和性を有する新規の神経用途電極を作製できることが実証され,交付申請書記載の研究実施計画については,ほぼ完遂できたと考える。従って次年度以降は,上記4)の本実験を行うと共に,CNTバンドル電極を用いた神経活動計測の可能性を生理学実験により検討する。
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