研究概要 |
生体組織内の応力・歪み分布をベクトル的に可視化する3次元応力場顕微鏡の開発を目的とし,マイクロ力学試験機と第2高調波発生(SHG)顕微鏡のハイブリッドシステムの構築を行った.まず,高精度マイクロ力学試験によってコラーゲン線維の力学試験を行うと同時に結晶の構造変化をSHG顕微鏡で検出し,前者から得た応力-ひずみ線図と後者から得たSHG光信号の相関をとることで,SHG顕微イメージを応力,歪みの分布へと変換する際の校正データを取得した.本課題では,SHGの強度だけでなく,透過側,反射側,それぞれの強度を計測し,その比をとることによってクリープ変形のような特殊な変形と,弾性変形の切り分けを行った.これにより,応力の立体分布を非浸襲,非接触,非染色にin situ計測する装置を完成させ,力と生体の関係を解明するための技術的な基盤を確立した.また,実際に電気化学法によって製作したコラーゲンを用いて引張試験を行い,応力,引っ張り変形の検出を試みた.その結果,弾性変形によるSHG光の発生効率向上と,クリープ変形によるとみられる透過反射の強度比の変化が計測された. 本技術の適用により,今まで計測が難しかった力というパラメーターを生体中でイメージングすることが可能となる.生体の生理反応は機械的な刺激,相互作用に強く影響されていることがわかっており,これらを解析するための必須の手法として発展していくことが期待される.
|